マインドフルネス講師としてマンツーマンセッションをしていると、どの方も、たくさんの不満や不安、怒りを抱えていらっしゃいます。
大量の愚痴やお悩みを吐き出して、ひとしきりそれが落ち着いた時に私が「じゃあ、あなたはどうしたいですか?」と伺うと、「・・・。」と、言葉が出てこなくなります。
不満があるのは誰よりも、自分が一番、わかっている。
でも、「自分はどうしたいか」という点に意識を向けると頭が真っ白になってしまうのはなぜでしょうか?

マインドフルネスを知る前の私、は全く同じ状況でした。
- 許せない状況や人がいる
- 自分が尊重されていない気がする
- 不満の原因は沢山あって、そのどれもが自分でコントロールできないことである
- 自分だって◯◯したいのに、倫理的にしないようにしている
- 誠意をもって生きようとしているのに誠意をぶち壊す人達がいる
…などなど、挙げたらキリがありません。
激しい怒りを抱えているにも関わらず、自分の無力感が虚しくて。
攻撃的な気持ちがあるのに何ひとつ解決できないんですよね。
「自分の希望」を語れない理由
目の前の問題を解消したくて、幸せになりたいって心の底から願っているのに、「どうしたい?」って聞かれて、何も答えられない理由は様々です。
今回は、その中でも重要なポイントを3つ紹介しますね。
無力化
1つめは「無力化」です。
DVやパワハラ、毒親などにより支配的な態度を取られ続けた結果、自分が無力のように感じてしまうことがあります。
支配的な人にあらゆる言動が拒絶されたり否定されたりすると、脳が麻痺して「自分の意志決定は尊重されない」と思い込むようになってしまいます。
例えば…
毒親の場合、「私はこうしたい」と行動しても「そんなことしても意味ない」と言われたり、「許可しない」と目の前に立ちはだかられたりして、意志をポキンポキンと折られた経験から「私の意志は貫いてはいけないし、必ず許可が必要なんだ」と思うようになります。
「自分を変えたい、こう生きてみたい」という気持ちが心の奥底にあるはずなのに、「どうせ無理」「許可される人生を耐えるしかない」となってしまいます。
視野が狭くなって、自分が無力で、何の役にも立たない人間のように感じてしまいます。
そのような経験が積み重なると、「じゃあ、あなたはどうしたいですか?」と聞かれても困ってしまいます。
「自分に未来を決められる権利ってあったっけ」とか「◯◯したい、って言っていいんだっけ」とフリーズしてしまうんですよね。



夢や希望がないわけではないのです。
持たないように、持ってはいけない、そんな無意識で本音を抑えてきたのではないでしょうか。
他責思考
2つめが「他責思考」です。
深刻に悩んでいる人の多くは、自分の周りで起きていることを解決しなければならない、と思っています。
外側にある要素が消えれば、問題は解決すると信じています。
- あの人がいなくなれば全て解決する
- 義母さえいなくなればいい
- ママ友グループなんて無くなればいい
- 子どもの担任の先生が要望を聞いてくれない
- 調和を乱す人が許せないから、あの人は調和を保つべきだ
- 職場では誰にでも対等に接するべきなのに、しない人がいる
誰かを責める「◯◯してくれない」「◯◯になってほしい」という思考は溢れるほど出てくるのに、「自分はどうしたい」が出てこないんです。



「◯◯のせいで自分は苦しんでいる」という他責思考を握りしめていると、自分の外側に不愉快さの原因を探し続けることになります。
条件の檻
3つめは「条件の檻」です。
「自分はどうしたい」と考えようとしても、一瞬のうちに様々な条件のハードルが目の前に現れます。
- 仕事を辞めたい⇔収入が減るから辞められない
- 引っ越したい⇔お金が無いからできない
- 美術館に行きたい⇔子が小さいからできない
- 仕事をしたい⇔親や配偶者に反対されるからできない
「どうしたい」を考えれば考えるほど、非現実的のように感じるアイディアばかり浮かんで、すぐに「いや、ムリ。だめ、できない」と絶望してしまいます。



望んでも叶わないと思うと、望むことすらしなくなってしまうのですよね。
じゃあ、私はどうしたい?
何かトラブルに直面した時、大きなストレスを感じた時に「じゃあ、自分はどうしたい?」に答えるにはどうしたら良いでしょうか。
解決策はとってもシンプルです。
日頃から自分の本音がわかるようにすれば良いんです。
それもハッキリと、具体的に、です。
あなたの「本音」は何ですか?
あなたの本音はどこにありますか?
モヤモヤ~イライラ~ドロドロ~
ふざけんな!消えて!サイアク!どうして!
そのムシャクシャしているものの根っこにある、心の声はなんと言っていますか?
「悲しい」や「不安だ」ではありませんか?
- ママ友グループに入れなくて憎んだ【本音】誘ってもらえなくて悲しかった
- 新しい上司の返事に腹が立った【本音】上司の人柄がわからないから不安だ
- 夫が家事を手伝わなくて腹が立つ【本音】大切に扱ってもらえていなくて悲しい
- コンプレックスを笑われて腹が立つ【本音】過去の嫌な記憶が思い出されて悲しかった
大抵の怒りやモヤモヤした感情の根っこには必ず、悲しみや不安があります。
怒りコントロールしなくていい
怒りは二次感情といわれています。
感情を観察すると、その奥底に純粋な自分の悲しみや不安が見つかるはずです。
「怒りは二次感情」という知識を知っておくだけでも、ちょっと世界が違って見えるような気がしませんか?
怒りに支配されている状態は自分でコントロールできず、苦しいものです。
でも怒りをコントロールする必要はありません。怒りを観察して、その奥の本音に気づけば良いのです。
「そうか、不安だったのか」そう本音に気づくと、ホッとして、怒りは収まります。そして本音に気づくことは、自分に寄り添うことにつながります。
マインドフルネスで自分を知る
マインドフルネスは「今この瞬間」の自分の在り方に焦点を置きます。
自分の周りの世界について一生懸命に考えて悩むのはひとまずやめて、自分の状態に意識を向けます。
- 今、どんな感情があるか
- 今、どんな呼吸をしているか
- 今、違和感のある体のパーツはあるか…など
自分の状態を観察していくと、自分のことなのに知らないことが沢山見つかるはずです。
- 緊張すると、無意識に歯を食いしばる
- 苦手な人が近づくと、呼吸が浅くなる
- 「責められる恐怖」といつも闘っているな
- 嬉しいときは、お腹がポカポカする
- 着飾ることより、食べることが好きなんだな
- 映画館に一人で行くと、楽しいな
感情や体の感覚に意識を向けると、見えてくる自分の姿は「ありのままの自分」です。
マインドフルネスは感情や体の感覚を観察することで、過去や未来のネガティブな妄想から距離を取って、「今ここ」の自分を把握できるようになります。
自分を知ってできること
自分を観察すると、自分を過小評価せず、過大評価せず、正しく知ることができます。
そうすると…
どうせ無理、な気持ちの「無力化」が無くなります。
自分の気持ちに寄り添えるから、他責思考が減ります。
漠然とした不安ではなく、具体的に何ができるか考えるので「条件の檻」も無くなります。
「じゃあ、自分はどうしたい?」の答え
「じゃあ、自分はどうしたい?」の答えはマインドフルな観察で必ず見つかります。
しかも、一生懸命に考えなくても、自然と見つかります。
マインドフルネスって何?自分らしさって何?どんな問題が解決できるの?
ご興味・ご質問がある方はこちらの記事もご覧ください。
↓

